(下)承認へ迅速審査が急務 | 原発災害の情報など (休止)

(下)承認へ迅速審査が急務

(下)承認へ迅速審査が急務
http://www.yomiuri.co.jp/iryou/medi/renai/20060419ik01.htm


 乳幼児が死に至る場合もある、細菌性髄膜(ずいまく)炎。6割以上がHib(ヒブ)と呼ばれる細菌が原因で、世界ではワクチンの予防接種が普及しているのに、日本ではいまだに受けられない。

 「Hibワクチンがないなんて、信じられない」(イギリス)、「本当にないの? 日本は金持ちだろう?」(アラブ首長国連邦)、「わが国には(ワクチンがあるから)Hib髄膜炎はありません」(韓国)

 これらは、日本外来小児科学会の会員たちが接した海外の小児科医の声だ。

 Hibワクチンは、1980年代後半から先進国で普及、導入後は髄膜炎の患者数が激減した。

 開発途上国で普及が遅れていたため、世界保健機関(WHO)は98年、定期予防接種を推奨し、導入を促した。現在、100か国以上で使われ、92か国が乳幼児への定期接種を実施。これらの国々では今、Hib髄膜炎は「過去の病気」となった。

 一方、日本では90年代後半から、国内の製薬会社がHibワクチンの承認に向けて治験を開始、2003年3月、国に申請した。

 現在、独立行政法人の医薬品医療機器総合機構が審査中だが、3年が過ぎた今も承認されていない。ワクチンがいまだに使えない国は先進国では日本だけで、日本小児科学会は昨年6月、厚労省に早期承認を求める要望書を提出した。

 導入が遅れた理由としては、国内の髄膜炎の実態把握が遅れていたことや、過去に他のワクチンの副作用で重大な被害が相次ぎ、行政や一部の医師が予防接種に慎重なことなどが挙げられている。

 また、承認の遅れに対しては、審査体制の貧弱さを指摘する声も強い。

 新薬の審査担当者は、米国では2735人いるのに対し、日本では198人。このうちワクチンなど生物製剤系の担当は米国約800人に対し、日本は19人と極端に少ない。しかも、昨年までは定員不足で15人しかいなかった。

 国の「予防接種に関する検討会」座長で、国立成育医療センター院長の加藤達夫さんは「経済大国の日本で、いまだに毎年600人の乳幼児が髄膜炎に苦しむのは憂うべき問題。早急にHibワクチンを承認すべきだ」と訴える。

 さらに、「承認後は費用の公的負担がある『定期接種』として、予防接種法で位置づけることが望ましい」と語る。

 少子化社会を見据え、幼い命を守る迅速な対応が国の急務だ。(山口博弥)

 (次は「病院の実力・回復期リハビリ」です)

 世界保健機関の見解 Hibワクチンは、非常に有効で、重い副作用が実質的にないことが明らかになっている。安全性と効力を考慮すると、国家的な実施能力と優先度に応じて、乳幼児の定期接種プログラムに加えるべきである。(抜粋)

(2006年4月19日 読売新聞)

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